「それでも夜は明ける」感想(ネタバレなし)

それでも夜は明ける」感想(ネタバレなし)

原題:12 Years a Slave
監督:スティーヴ・マックイーン
脚本:ジョン・リドリー
原作:ソロモン・ノーサップ
『Twelve Years a Slave』
制作:ブラッド・ピット
デデ・ガードナー
ジェレミー・クレイナー
ビル・ポーラド
スティーヴ・マックイーン
アーノン・ミルチャン
アンソニー・カタガス
音楽:ハンス・ジマー

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あらすじ:人身売買、奴隷、人種

公開日に行ってきました。「それでも夜は明ける」。各映画賞を総ナメにして、アカデミー賞作品賞を受賞しました本作品。日本公開日時本当に上手いな…。公開日なのか映画館の場所がアクセスしやすい場所なのか外国人の方も結構見かけました。

感想

「見たくない。」と思ってしまった。
「でも見なければ。」そう思った。

最初から最後までずっと泣いてました。何が悲しいのかも、何が悔しいのかもわからず、辛くてずっと泣いて泣いて嗚咽が漏れないように必死になって、スクリーンを睨みつけて唇を噛み締めながら見てました。喉が渇くまで泣いた映画なんて久しぶりに見た。

惨たらしい描写の数々に目を背けたくなるほどで客席からもハッと息を飲むのが感じられました。酷く、理不尽で「これが同じ人間のすることか。」と。拷問も強姦も強制労働も全部隠すことなく描写しています。白人達の「黒人は奴隷になって当たり前」「所有物に何をしても許される」黒人達の「自分は奴隷だから逆らってはいけない」「生きたければ従わなければならない」そんな「当たり前」が恐かった。人の作った道具が人を傷つける為だけに使われているのが恐かった。自分がどちらかになるとしたら。そんなことを考えて出た自分の考えが恐ろしいと思った。カットが所々とても長いのですが、ひたすら苦しんで泣き叫ぶ黒人達を見て色々感じたり、考えたりしました。黒人を使う白人達もただの「悪人」として描かれているのではなく傲慢や葛藤や欲望もしっかり描かれています。奴隷問題について知らないことを恥だと思いました。自由黒人なんて言葉さえ知らなかったし…。

見たくないと思ってしまった。
見なければと思った。
見てよかったと思った。

ストーリー
ブラッド・ピットの登場とそのキャラクターとその後のストーリー展開に「んんん…。」となってしまいました。んんん。キャラクター<俳優を感じてしまって。あと唐突すぎて追いつけないというか。テンポが違う存在をポンと入れるのって難しいなぁ。うーん。でもブラッド・ピットは超カッコよかった。うん

音楽
素晴らしいです。美しいクラシック音楽とゴスペル。私はゴスペルが好きなのですが、泣きながら「あぁ、ゴスペルの起源って『奴隷の人達の歌』だよな。」とさらに泣くという。ゴスペルが沢山聴けます。Roll Jorden Roll.

キャスト
白人のキャストも黒人のキャストも何を感じながら何を思って演じたのでしょうか…。そんなことを考えながら見てました。主要な役の人達も脇役の人達も凄かった。本当に凄かった。恐かった。辛かった。感情がスクリーンから漏れ出しているかのような演技だった。

その他
「余白」を上手く使ったカットが多かったような気がします。アップが多いのでトム・フーパー風と言っている人がいましたが、確かにちょっと似ているかも。私はこっちのが好みです。

映画って起承転結があって、大衆ウケを狙っているエンターテイメントだけではないよなぁと。真実や歴史を映像で伝える伝記としての役割もあるのだと学んだ映画でもあります。

楽しい映画でもない
感動する映画でもない
重い、辛い、暗く、目を背けたくなる程惨たらしい映画です。
でも私達は奴隷という問題が今もある世界で生きている。そういった意味で見てほしい映画です。素晴らしい映画です。

それでも夜は明ける
この邦題に関して結構批判的な意見をよく見かけるのですが、私はこれでいいと思います。この邦題をつけた方の真意は私にはわかりませんが映画を見終わってこのタイトルを見たときに「『それでも夜は明ける』とは今もある奴隷問題についてのタイトルなのかな。」と。もしかしたらこの邦題をつけた方はこの映画と今の世界について希望を持ってつけたのではないでしょうか。世界に存在する、存在した全ての奴隷の人達がいなくなる。そんな希望を持ってつけたのではないかと。

それでも夜は明ける