舞台「真田十勇士」感想 ~とにかく楽しいスペクタクル時代劇~


マジでスペクタクルだった。
びっくりした。
なんでこんなに面白いものをもっと早く教えてくれなかったの!!!


 「スペクタクル」[spectacle] 
(1)壮大な光景
(2)映画や演劇などの豪華・壮大な見せ場。また、そういう見せ場のある作品。
はてなキーワードより

監督 堤幸彦
脚本 マキノノゾミ
音楽 ガブリエル・ロベルト

公式サイト
http://sanadajuyushi.jp/

公式PV


あらすじ
時代は戦国時代末期。世の中では徳川と豊臣の対立が深まっている。ひょんなことから名将 真田幸村と出会った抜け忍 猿飛佐助。話してみると本物の真田幸村は平々凡々なヘタレで、世間での真田幸村の評判は偶然が重なって戦に勝利したこと、自分の顔がいいからだと言う。そこでピンとひらめいた猿飛佐助は「オイラの嘘で、あんたを本物の立派な武将に仕立て上げてみせようじゃないか!」と真田幸村の押しかけ家臣となる。かつての忍び仲間 霧隠才蔵をコンビを組み、「真田幸村にはそれぞれが一騎当千と言われる10人の忠実な家臣『真田十勇士』がいる」と噂を広め、仲間を集めて真田幸村が本物の名将になるようにと動いていく。何が嘘で何がまことか。嘘から始まった「真田十勇士」の物語は、いつしか真実へと変貌を遂げ、激しい戦の中で、彼らは「真の英雄」へと成長してゆく。

感想
親しくさせていただいているフォロワーさん(村井良大さんファン)に「面白いよ!」とおすすめしていただいた。それと映画化もされるということで勉強がてら観にいった。とんでもなかった。

私は普段からエンタメ好き!を公言している。ジャニーズも宝塚歌劇団東宝ミュージカルも映画もドラマも大好きだ。見に来てくれたお客様を全力で楽しませてくれるエンタメが好きだ。もちろん、問題提起や消費者に考えさせるような作品も好きだが、なんとなく「楽しみたい」という気持ちが人よりも強いのかもしれない。

作品「楽しんでください!」
私「楽しみます!!楽しいです!!」
が理想だ。

それでは本作品「真田十勇士」はどうだったのか。

真田十勇士「やりたい放題しました!!!!!!楽しんでください!!!!!!!!!!!!!!」
私「ありがとうございます!!!!!!!最高か!!!!!!」

もう舞台エンタメの娯楽的要素がここに全部詰まっていると言っても差し支えないくらいじゃないかと思った。楽しい。とにかく楽しい。舞台を見ていて楽しすぎて泣いたなんて初めての経験だった。時事ネタ、内輪ネタ、歌舞伎、アイドル、ミュージカル、ドラマ、ライブコンサート、ギャグ、その他諸々これ以上詰めれないというくらい詰め込みました!といった印象。「スペクタクル特化してます。エンタメ特化してます。」というのが分かるので作品としての世界観の崩壊はなく、一つの作品としての見事にまとめあげていた。

この作品の主演俳優は中村勘九郎さんなのだが、彼は誰もが知る一流の歌舞伎役者である。私は彼の歌舞伎役者の側面を知らないので詳しいことは言えないが、舞台上での立ち居振る舞いはとても立派で、誰もが好感を持たずにはいられないヒーロー猿飛佐助を演じていた。だが私が言いたいのはそこではない。

冒頭のキャラクター紹介の場面を紹介する。

語り(ナレーション)「そして永遠のヒーロー猿飛佐助に歌舞伎界のヒーロー。ご存知!うちの一行 中村勘九郎だ!よっ中村屋ァ!」
佐助「再演もやりにくい語りだあ。ってか身内出てきてしまった。」
(語りを歌舞伎役者の中村芝翫さんが今回行っている)

佐助「あ、もう浮気したらダメですよー!!」

時事ネタにもほどがある。

(中村芝翫さんは不倫騒動で一時ワイドショーをにぎわせていた)

また、歌舞伎のような振付が多々あり、「あっ、なんか見たことある!面白い!」と興奮しながら観劇した。しかも本物の歌舞伎よろしく、しっかりと拍手のための間を設けてくれているのだからニクい。

この作品は役者も濃ければ、その人が演じるキャラクターも濃いといった調子で、いわゆる中の人ネタを随所に盛り込み、本人によるセルフパロディもいくつも仕込まれている。紅一点のくのいち忍者 火垂(元AKB 篠田麻里子さん)によるAKBの名曲「会いたかった」の指差し振付も見れた。超かわいい。 

以下、出てきた小ネタのいくつか

語り「早くもネタバレします。」
観客「(すんのかよ!!)」 

語り「初演大好評につき再演!真田イヤーにあやかったわけじゃありません!」
観客「(言っちゃったよ!!)」

幸村「顔がいいというのは辛い。」
観客「(自分で言うのかよ!確かに男前だけれども!)」

村人「(3代目J Soul Brothers R.Y.S.E.Iダンスを踊る)」
観客「(まさかのJ Soul Brothers!!!)」 

小ネタが多すぎる。楽しすぎてしんどい。しかも毎公演変わるというアドリブも多々あるので追いきれない。
何せ時代劇なのに開始5分で「わ!すごい!ディカプリオそっくり!」といったセリフが出てくる。なんかもう堤監督が堤監督すぎる。ドラマ「TRICK」シリーズをお好きな方はきっとお分かりいただけると思う。

また、初っ端にある生の和太鼓演奏は大迫力で胸の奥にドドンと響いてくるものでとてもかっこいい。音楽も爆音で照明もこれでもかというくらい使う。「お客様に楽しんでいただけるのなら経費気にしません!」といった姿勢が何もかもから伝わってくる。最高だ。

とにかく楽しいから見て!!
マジで!!!!! 

少しまじめな話をすると、エンターテイメントに特化した舞台作品の作り上げ方にはとても感銘を受けた。舞台の中で役者というものは、その舞台の上にだけ生きるキャラクターであってそれ以上でも以下でもない。というのが通常だが、この作品では作品自らが「どうですかこの役者!有名人ですよ!見てってください!」と声を大にして主張する。日本の娯楽に根強いスターシステムに沿った演出である。時代劇なので何となく「堅苦しそうだな」といったイメージを持って劇場へ向かったが、そんなものを粉々になるまで砕いてきた作品だった。

キャラクターもそれぞれ個性的で、舞台のツートップコンビである猿飛佐助と霧隠才蔵は漫画「ワンピース」に出てくるルフィとゾロ。もしくは漫画「ルパン三世」のルパンと次元をイメージさせる真逆な性格の良いコンビで、他のキャラクターも、とても少年漫画っぽいのだ。 ストーリーも単純明快でわかりやすく、バトルシーン(殺陣シーン)もかっこいい。必殺技もあるので「週刊少年ジャンプで連載してほしい」と思いながら観た。

また、本作品で特徴的な演出といえばプロジェクションマッピングがあげられる。石壁を模した舞台セットなどに映写される映像達によってシーン展開が変わっていくのだ。特に舞台に降ろされたスクリーンに映像を映していく演出には「観客が楽しけりゃいいじゃん?」と舞台でありながら映画的アプローチを行う大胆さに舌を巻いた。

ここで意外なのは、ここまで娯楽に特化した演出、脚本でありながらしっかりと泣かせてくるところである。仲間の死、親子関係、主従関係など、いつの間にやらキャラクターに引き込まれて感情移入してしまい泣けるのだ。役者、演出、脚本などの色んな要素が絡み合いつつ、その全てのレベルが高いからこそなし得るものだと思う。

最高に楽しくて、笑えて泣けて感動した。爽快スペクタクル時代劇だった。あと10000000回観たい。

10月23日(日)まで兵庫県立芸術文化センターで公演中なので興味のある方は後生のお願いだから観に行ってほしい。

ちなみに
初演版のDVD、ブルーレイが発売中



あと同監督の映画も現在上映中なのでこちらも機会あれば(こちらはスーパーヒーロー戦隊だった)



映画「真田十勇士」公式サイト


紹介してくださったフォロワーさんには感謝しかない。ありがとうございました。

余談ではあるが、ここ数年で「勉強のつもりで色んなものを観てみよう」とフットワークを軽くしてみたのだが、それがこんなにもハッピーをくれるものだとは思わなかった。これからもどんどん色んなものを観ていきたい。