夢が叶っていたかもしれない日

f:id:sasanopan:20180418222709j:image 先々週くらい前に突然仕事がまわってきた。詳しくは省くが、どうやら先輩の代打として上司と共にとある媒体の製作をするとのこと。あまりの急なことでこんな下っ端の私でも大丈夫かと胸は不安で埋め尽くされていたような気がする。それからは事前資料を作成したり先輩や上司に相談しつつ自分の想像するプランを立ててみたりとあっという間に日々は過ぎていった。

なんとなく、ただなんとなくとしか言いようがない。仕事の作業をしながら漠然と思った。

「これ、私の夢だ。」

あぁ、そうだった。大学生の頃、おそらく就職活動で悩んでいたときに将来こんな仕事がしたいと社会の何も知らずに思っていたのだった。その夢の中で私は自分の感情もスケジュールも人間関係もなにもかもを完璧にコントロールしていて堂々とやりたい仕事をやっていた。と思う。さて、思っていたのは覚えている。しかし、それは夢ではあるけれど目標ではなかった。絶対に叶わないとわかっていたから夢を見るのだ。そのときは漠然とただ胸の中で抱いていたイメージで就職活動のときには早々とその夢を諦めて一般企業に就職したし、そこで見事なまでに肉体的にも精神的にも滅茶苦茶になって新卒というのに2年も経たずに退職してしまった。退職してから転職活動をするときもあの頃の自分の夢のことなんか覚えてなかった。

だけど今こうして出来ている。そのことに気づいたときはあまりにも驚いて、ショックで、こんなことが人生にあるのかと胸が潰れそうだった。嬉しいだけではなく就活当時の絶望やあきらめや悔しさを一緒に混ぜて何色かもわからなくなった濃くてドロドロとした何かが胸から流れ落ちていく感覚さえあった。怖かった。まだ私は夢を叶えるだけのスキルも経験も足りていない。こうしたチャンスをありがたく受け入れるだけの器もない。頑張ってはいるけれどまだ早すぎる。怖い。

「スケジュールなんとかなったから代打しなくてもいいよ。ありがとね。作った資料もらえる?」

先輩にそう声をかけられたのは媒体製作直前の打ち合わせ前のことだった。ホッとした。せっかくやった資料作成がどうこうとか考えていたプランだとかを横取りされたなんて全然思わなかった。なんという心を読んだかのようなタイミング。実はこの人エスパーじゃないかと先輩を見つめると一瞬の間があって「うん」と言われた。なるほど。エスパーらしい。

夢を見ることと諦めることはきっと紙一重で、叶わないからこそ見続けることができる夢もあるだろう。叶えたくない夢だってあるはずだ。今回のものは「叶えることができたらいいな。無理だろうけど」といったものでそれを今まで目標にまで下ろしてこなかった自分の甘さが原因だ。ここだけの話、今の仕事先で就職できるなんて思ってもなかった。なんとなく自分の夢がそこにあって「受からなくても職場見学と必要なスキルがわかるだろう」と電話をかけ、あれよあれよという間に働くことになり、ここに落ち着いてしまった。憧れの職業を得て、今現在のところ毎日がとても楽しい。頑張りたいと思うし頑張っているとも思う。

ただ、ただ今回のことは青天の霹靂で予想外のものだった。それだけだ。私があのときに感じた夢を叶えることの恐怖は人生の中でこれから幾度となく繰り返される出来事だろう。夢は夢のままでいいこともある。だけど叶えたいとほんの少しでも思う夢なら目標にしてみてもいいのかもしれない。大丈夫。きっとやれる。