とても短い日記

f:id:sasanopan:20200720052105j:image

その日は残業して夜遅くに帰宅してしまった。次の日も仕事である。しかも早出。あぁ労働が憎い。梅雨が憎い。生活が憎い。嫌々シャワーを浴びて、何とか晩ご飯を食べて、ベッドに横になっていたら、キッチンでお皿を洗っている夫が目に入った。そう、恥ずかしながら我が家はワンルームである。カウンターキッチンなので料理や洗い物をしながら対面で会話ができるだ。いいでしょ。

元々私が1人暮らしをしていた部屋に、夫も一緒に住むようになってもう1年半くらい経つ。起きる時間がそれぞれかなり違うのでせめて1DKくらいの物件に引っ越そうかという話もチラホラ出ていたのだが、結局まだここに住んでいる。初めてうちに遊びに来た友人には大体の場合「ええぇ、ワンルーム!?」と驚かれる。で、同時に「喧嘩した時とかどうするの?」とも聞かれる。気まずくない?と。でも私と夫は滅多に喧嘩をしない。というか今までお互いが不機嫌になって口も聞かなくなるみたいな状態になったことがない。これもひとえに夫の寛容さのおかげである。彼は常に穏やかでニコニコと楽しそうに暮している。怒ることはほぼないらしい。

我が家では「相手に晩ご飯の用意をしてもらったら自分が洗い物をする(逆も然り)」というルールがあるのだが、今日は私が疲れているので夫がどちらもやってくれている。

ありがたいことである。

なんとなく梅雨時期は毎年鬱々と過ごしている。湿気は嫌いだ。暑いのも嫌だ。何とか気分を低空飛行あたりで日々を過ごしている。どん底にはなりたくないから。ノロノロと過ごし、考えても仕方のないことを永遠と考え続けて思い悩む。落ち込む。その日もそんな気分だった。

夫を見る。彼は引き続き洗い物をしている。食器類を洗い終わったので今度はフライパンに取り掛かったようだ。今日の晩ご飯は確かアジフライだったはず。

そんな夫の姿を見ていたら突然心がスーッと晴れていくような気がした。モヤモヤがなくなった。あぁ、なるほどな。

夫の名を呼ぶ。彼がこちらを見る。

 

「私はあなたがいたら大丈夫だと思うよ。」

「それはよかった。」

「うん。」

「じゃあ一緒に頑張りましょう。」

 

そうね。頑張ろうね。そう私が答えてこの会話は終わった。何が大丈夫で、何を頑張るのかを具体的に言わないのが私たちらしいなと思った。夫のことは出会って数年が経つ。未だにベタ惚れしている。でもようやく最近になって、一緒にいる覚悟みたいなものが自分の中に生まれている気もする。たとえこれから何があっても私は彼がいたら大丈夫だと思うし、きっと、彼の存在や思い出だけで救われ続けるだろう。だからきっと大丈夫。あと、できれば彼の側に居続けたいなぁ。

夫よ、長生きしてくれ。愛してるぞ。