花見をしたのだ

 

夫と初めて出会ったのは数年前の春の日に行われた飲み会(ただし私と友人の2人+夫)だった。それはもう桜が「満開ですよ!」と大声でアピールしているくらい満開の日で、道を歩けば桜が目いっぱい花を開いて春のど真ん中だということを知らせている。そんな日に今の夫と出会った。

帰りの道中、友人が運転する車に乗せられ、真っ暗な道に佇む桜の木をボンヤリと眺めていた。車のライトに照らされると白い花弁がもっと白く浮き上がったように見える。確かカーブの多い道で、友人がハンドルをぐんと切るたびに満開の桜がライトに照らされてバッと現れるものだから、少し面白かった。

そう、面白かった。いい飲み会だった。素敵な人と沢山話せたし、桜は満開だし、今日は良い日だな。そんなことを酔った頭で考えていたことをよく覚えている。

夫と交際を始めて1年経ったころに「あぁ、素敵な人と話せたし桜は咲いてるし今日はいい日だな」と思ったのだと当時の思い出を話すとにっこりしてくれた。

そしてまた別の日に、

「心が荒れ模様だったのでスヌーピーか花束か甘いものを買って帰ろうと思ったんですよね。そしてこれは桜の枝です。」と桜を挿した花瓶を抱っこして夫に見せたら「貴方のそういう感性が本当に好き。」と告白された。嬉しい。

だからなのか、毎年春になり桜を見ると夫に出会ったことを思い出す。交際を始めてもうすぐ5年、結婚して4年になるが、今も昔も変わらず夫は穏やかで、にこやかで常に気分が良く、私はいまだにベタ惚れしている。彼といると楽しい。彼といるときの自分も好きなので余計に楽しい。ハッピーセットis夫。エブリディスプリング。

そんなこんなで夫とは毎年お花見をしている。それはただの花見散歩のときもあれば、ライトアップされている桜を見にわざわざドライブすることもある。今年は立派な桜並木があるらしいスポットに行くことになった。寝る前に「お弁当はどこかのスーパーで買っていく?」と問うと、「手作り弁当がいいな。」と可愛らしいことを言うので、「任せろ。楽しみにしといて。踊る準備もしといて。」と答えると、爆笑していた。実を言えば、以前から仕出し屋さんやケータリングのお弁当に憧れがあって作ってみたいと思っていたのだった。そしてさらに白状するとInstagramで参考になりそうな写真も前からチェックしていたのだ。よし、やるぞ。

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出来た。我ながらいい出来である。おかずの味もかぶらないようにしたし、漬物もある。味付けは濃いめなので白ごはんにした(本当は花見弁当らしく桜エビと枝豆の混ぜご飯などにしたかったが)。ひとつずつお弁当風呂敷に包んで紙袋に入れる。熱々の玄米茶もタンブラーに用意した。準備は万全。念のためデザートとして個包装のチョコレートも入れておく。

結果から言えば、このお弁当は大好評で夫から「美味しい美味しい。」と絶賛された(私も食べたがなかなか美味しかった)。夫の喜ぶ顔を見るのは私も嬉しい。桜並木も見事で来年もここに見に行こうかと提案された。正直なところ、「どこでもいいよ」と思ったのだが、黙っておいた。あなたがいるならどこでもいいよ。お弁当くらい、いくらでも作るよ。

その日、眠りにつく前に夫が「あぁ、楽しかった。おやすみ。」と言って布団にゴソゴソと潜り込んだ時に、毎日そう思ってもらえればいいなと心から願った。そんな私が愛してやまない夫であるが、今日はソロキャンプをするのだと外泊している。早よ帰ってこい。