夢だった焼き菓子屋さんをオープンしたよ

※オープンしたのはポップアップショップであり常設店舗ではありませんが次回もやる予定です!

 

以前にも書いたが、コロナ禍のホームベイキングブームが終わるころにオーブンレンジを購入したのがきっかけでパンや焼き菓子をせっせと作っていた。夫(当時は恋人だったが)と二人暮らしというのにシフォンケーキを毎日のように焼き、1ホールをもりもりと食べ、週末にはパンを焼き、ジャムを煮たりする生活をしばらく続けていた。

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案の定、体重は右肩上がりである。ならばと他の人に食べてもらえばいいのではと友人や知人に菓子を振る舞うようになり、「美味しい!」の声を励みに暇を見つけてはコツコツと焼いては祈るようにプレゼントしていた。美味しいと言ってもらえますように。楽しんでもらえますようにと。

それから数年が経ち、仕事を変え、住む場所を変えた。1年目、慣れるのに精いっぱいだったが様子見されていたのか時間を持て余す。2年目、「滅私奉公」という単語が似合うほどの労働を要求される。3年目、何故か職場の誰よりも仕事を増やされており、「それだけ期待されてるってことだよ。」という慰めの言葉にさえ本気でイラつくほどの精神状態が続いている。いかん、話が労働への恨みつらみになってしまっている。

話を戻す。そんなこともあり、趣味として楽しんでいたお菓子作りやパン作りから距離ができてしまい、以前は「美味しいんだけど、しばらく焼き菓子はいいかな…。」とやんわり苦言を呈していた夫に「もう焼かないの?」と言われるほどだった。確かに、と思い、最後に焼いたのはいつだったかと調べると半年以上の前だった。あんなに好きだったのに。あんなに楽しんでいたのに。いつの間にか舞台鑑賞も映画鑑賞もしなくなっている。あれ、何の為の生活だ?何の為の人生だ?そんな永遠の問いが頭から離れなくなったとき、最愛の祖母が亡くなった。毎日泣きながらなんとか生活をしていたが、自分の人生の先に何も見えなくなっていた。希望も光も自信も何もかもを失くしたと感じた。それぐらい祖母をことを本当に、今でも心から大好きだから。心の拠り所にしていたから。

起きる。支度をする。仕事。帰る。家事。寝る。起きる。仕事。これではいかんと韓国旅行に行ったりもした。そのあたりのことはこちらの記事に書いてある。

それから、台湾に旅行へ行った。一眼レフカメラの講座を受けた。焼き菓子の型を買った。特に目標もなくコツコツと生活を切り詰めて貯金していたお金をバンバン使った。自分の焼き菓子のお店をどんな形でもいいから1回開いてみたいからとレンタルスペースに問い合わせて友人のパティシエに手伝ってほしいと声をかけた。問い合わせ結果は良好。友人もふたつ返事でやろうと賛同してくれた。ありがたい限りである。「夢は声に出すことが大事」というけれど、その通りだと深く思う。

さあ、やるぞ。商品ラインナップの選定、材料の買い出し、当日のスケジュールの調整、宣伝、陳列の仕方の提案など、怒涛のようにやることが目の前を埋め尽くしていく。せっかくだしとユニフォームも作った。この時点で既に赤字決定。それでもよかった。だって楽しかったから。いや、継続的にやるにはこの意識ではダメだけども。

試食会を得て、レンタルスペースのオーナーにも本格的に許可をもらった。オーナーに「屋号はあるの?」と聞かれた。

「あります。焼き菓子Kippoです。」

そうなのだ。実は前々から作っていただいた素敵なロゴがあり、そのときに屋号も合わせて決めていたのだ。その時はこんな形でオープンするなんて夢にも思わなかったが。

吉報ともじったこの屋号には、焼き菓子を食べた人に吉報が訪れますように。この焼き菓子がお客様にとっての吉報になりますようにとの意味が込められている。あと私が高身長(のっぽ)なのもある。

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ショップカードです。とても可愛い。幸運の象徴でもある子豚がプレゼントを見つけた。というコンセプトで作っていただいたこのロゴ。最高。私のお店のロゴなんですよ。可愛い!

いざ本番当日、天気はあいにくの大雨。友人と「お客さん来なかったらみんなでティーパーティーでもしようか。」と呑気に考えていたが、オープンしてみると沢山の人が訪れてくれた。追加生産しませんと事前に案内していたが、それでは間に合わないと途中で追加したくらいの盛況ぶりだった。お待たせしてしまったお客様や品切れの商品を出してしまったことは反省点であり、今後に必ず活かしたいと思う。

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楽しかった。夢のようだった。「やりたい」という自分の気持ちを声に出して人に伝えて考え、行動すれば夢は実現可能なのだと叩きつけられた1日だった。赤字だけども。でも、赤字なことが確定していてもやることが大事ということも学んだ。最初から黒字で上手くいく人もいれば、そうじゃない人もいるだろう。自分は後者であることを念頭に置いておかないと、そもそも行動すらできなかったと思うから。それに、それ以上に学べたことが多かった。世の中、やってみないとわからないことの方が多い。ならやったほうがいい。ただし資金は大切。計画も大切。あと、屋号とロゴがあること、簡単なポートフォリオがあることでこんなに話が早くまとまるのかという驚きもあった。説得材料ってどんな場合でも必要だな…。というのも学び。

「継続こそが力なり」という格言があるが、実際にそうなんだろう。しかし、私にとっては「やめなかったことが力になる」である。焼き菓子を作ることを半年間やめていたが再開した。途中でやめてもいいのだ。再開さえすればそれは「継続」にカウントすればいいのだから。都合よく考えすぎかもしれないが。

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今はまた、もりもり焼き菓子を家で焼いている。

いつか、どこかの誰かが、この記事を読んで今まで足踏みしていたことにチャレンジしてくれたら嬉しい。どこか旅行に出かけるとかでもいいし、今まで行ったことのない料理をしてみるとか、バッティングセンターに行ってみるとか、久しぶりに会いたい人に連絡してみるとか、そういうのでも。私は来年こそプロ野球を球場で観戦してみたいし、ネイルサロンに行ってジェルネイルをしてみたいしポップアップショップも定期的にオープンしたい。ブログも継続したい。また文学フリマにも出展するのもありかもしれない。「自分らしくない」という呪いの言葉は小麦粉に混ぜて私がオーブンで焼いて昇華します。これは冗談だけど、「やりたかったらやればいいじゃん」を自分に向けて言うまで時間がかかってしまったことは、私の中にある少しの後悔のうちの一つだから。

やりたいこと、やっていきましょう。