ジャージー・ボーイズ 感想(ネタバレあり)

ブロードウェイの傑作ミュージカルを巨匠クリント・イーストウッドが映画化。ということと、予告編の「シェリー」のところまで見て鑑賞。初日、最前列。私の首が死んだ。

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あらすじ:男の子が頑張ります。歌ったり恋したり喧嘩したりします。

見た感想は一言でいうと
「Oh, What a Night!!(あぁ、なんて素敵な夜!!)」
でした。素晴らしかった。本当に素晴らしかった。
フランキー・ヴァリをはじめとするフォー・シーズンズの成功まで、成功してからの舞台裏を数々の名曲と共に描いているのですが、面白いのがその描き方。最初にトミーが出てきてカメラ(観客)に向かって話し、「おや、トミーが狂言回しなのかな。」と思いきや物語の途中で語り手がボブ、ニック、そしてフランキーと変わっていきます。後に調べたミュージカル版の方の概要で「このミュージカルは四季(フォー・シーズンズ)ごとに場面展開され、それぞれの場面を別のバンド・メンバーがそれぞれの視点によりバンドの経歴や音楽を語り継ぐ」と知り、うなりました。なるほど面白い。1人の「物語の語り手」を4人がやるのではなく、4人それぞれから見たバンドを語り継ぐ。という物だったのです。つまり視点は4つあるということ。しかもここでさらに面白いのが「四季」で分かれていること。トミーが語る「春」はジャージー州でただの男の子だった彼らがボブと出会うまでのハチャメチャな無茶をしたりな若くて青臭いパート。ボブが語る「夏」は少しずつ、そして一気に成功し、栄光を掴むまでのパート。ニックの語る「秋」はバンドに問題が次々生じ、とうとうメンバーが脱退するまでのパート。フランキーの語る「冬」はフランキーがひたすら働き、苦労し、娘が亡くなりという厳しいパートです。で、フィナーレ。ただの春夏秋冬ではなく植物でいうと「春に種から芽が出てきて成長し、夏には青々とした葉が太陽の光を一身に浴びて輝き、やがて葉が色づき、枯れ落ち、厳しい冬を少しの温もりと共に乗り越え、そしてまた春がやってきて四季は巡る。」のように季節が徐々に移り変わりゆくのを上手く利用しているなと。

クライマックスの「Who loves you」で一気にタイムスリップするあの瞬間の見事なこと。歳を重ねた彼らが集まってパフォーマンスした最後の日。1990年、ロックの殿堂。一人一人の視点で物語は締めくくられ最後のパフォーマンスで当時に戻る。音楽さえあれば彼らはいつでも当時に戻れる。それは私達もきっと同じなんでしょう。それでもう涙腺崩壊しているというのに加えてミュージカルのカーテンコールのようなエンディングにさらに号泣。登場人物全員が全盛期の姿で登場し、前に出て、最後に全員で歌って踊る。いい表情でポーズを決めた彼らに拍手を送りたい。というかあの場面拍手してもいいのでは。多分そういう演出なんだし、ねえ。誰かやってきてください(他力本願チキン)

エンドクレジットでは本家フォー・シーズンズの曲が流れます。完璧。
60sファッションも可愛いし出てくる女の子が脇役からエキストラまで皆本当に可愛い!チャーミング!!セピア調の映像も好きです。物語のテンポのよさもいい。

青春ドラマを見ているのかと思えば、バンドの当時のドキュメンタリーを見ている気分にもなり、コンサートかと思えば最後にミュージカルだったのだと気づく。映像、舞台、コンサート、ミュージカルの魅力のいいとこどりをギュギュッと詰め込んだそんな映画です。満足!!

余談ですがフランキー・ヴァリご本人(80歳)は今も現役でツアーを続けているということで、さぞかし年輪の刻まれた大木なんだろうなぁと思います。その年輪の中にフォー・シーズンズとして過ごした時代が中心にあったら私が嬉しい。

四季は巡り、時間が過ぎゆくのを誰も止めることはできないが、
人は望めばいつでも当時に戻れる。さぁ、あの頃に帰ろう。